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山椒の実

母親になって後悔してる (オルナ・ドーナト)

後悔ほど無意味な感情は珍しいよね、という感覚があります。過去はすでに配られた手札であって、これで勝負するわけですよ。個人レベルではそう。ただ公共のため、後続の人のためにスタートラインの不当さを訴える必要性は大きい。

イスラエルは先進国ですが、出生率が高いみたいですね。女性に対して母親になるような圧がかけられている。おそらく男性にも父親になるような圧があるんだろう。結婚して子供作って家買ってはじめて一人前、みたいなアレ。

この本はちょっと前にかなり話題になったセンセーショナルな本。母親になったことを後悔しているイスラエル女性に焦点を当て、多くのインタビューをしている。その多くが複数の子を産んで育てていたり、すでに祖母だったり、さらに次の子を妊娠中だったりする。多様な人生を歩んでいる多様な人がみな、後悔する。

先進国だけに、子育ての負担によってほとんど全ての活躍の機会を奪われる喪失感がある。出産や子育てという活動は、人生に対する負担が非常に大きいということが読み取れる。その人生を選んだことを後悔しているのだ。子供を憎むという感情ではなくて、ただ自分の人生を振り返って、選択を後悔している構図。

これは私が提唱(?)する「人生クソゲー論」にもつながってくる話ではある。なんなのもう、っていう。どんなにいいことをしても報われることはない。能力が水準に達していなければこのクソゲーに打ち勝つことができないのだ。グラフィックだけは無駄に精度が高いけど、そこまで綺麗とは感じないしね。

ただこのあたりにはグラデーションがあるようですね。何も苦労がないとしても母親になりたくなかった、という本能的な反応である人もいれば、苦労がなければ、条件が整えば良いと思っている人もいる。多様な人へのインタビュー、その思いは一様ではない。

SFファン的な考えだけど、将来的には出産や育成は人間自身ではなく機関がやるようになるんだと思う。そうじゃないと人間の幸福が増えないと思うんだよな。費用や労力もかかりすぎてさ。ただのクソゲーだったものが、さらにハードモードになるんだ。