Skip to main content

山椒の実

シャーロック・ホームズの護身術 バリツ (エドワード・W.バートン=ライト)

読まずにはいられない魅力のある本だ。タイトルだけですでに勝ってるよね。子供の読書感想文に選んだら選者の多くにはストライクかもしれない。うちの子供は、読書感想文を書いて提出する宿題が出るような年齢は過ぎてしまったのだが。

日本が世界に誇るあのマーシャルアーツ。ホームズをモリアーティ教授との死闘から救い出した護身術。一説には伊藤博文が直伝で少年時代のホームズに教えた武術だったりするのだが、その謎を解明するためのキーとなるような本。この本では、バリツの最有力候補である、バーティツについて詳細に記述し、現代の格闘家を啓蒙するのだ。愛用のステッキがうなりを上げるぜ。

中身を見ると、確かに和風の武術が含まれていますね。柔術系で、中心線を意識して対角線上で逆方向の力を加えることで、少ない力で相手の体を回転させたり。後の先みたいな概念もあるし、関節技も駆使している。

ステッキ術については、リアガードで持ってない方の手を前に出して囮にする構えが基本形か。重心移動で間合いを調節し、そこからいろいろな技に発展する。

この本自体は雑誌に掲載された記事を和訳したものであり、実戦的な技を紹介すると思えば奇術的などうでもいい技を紹介したりして、まとまりのないものになっている。しかしバーティツ自体は武術としてはそれなりに整理された体系があるようにも伺える。免許皆伝とかベルトシステム的なものがあったのかどうかは本書からは分からない。

開祖が速攻で普及を諦めてしまい、ドイルがホームズに使わせなかったら誰にも顧みられずに滅んでいたと考えると、奇妙な巡り合わせを感じるねえ。