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山椒の実

香君 (上橋菜穂子)

プリマの香薫の歌が頭の中を駆け巡る。おさえきれない、この気持ち。香薫やシャウエッセンには絶大なる信頼感があるよね。この本はどうか。

農業革命を経て発展を遂げたあとの、帝国ファンタジー。またオルファクトグラムの系統か。異常臭覚発達者が八面六臂の活躍を見せつける。アクションあり恋愛あり戦闘あり推理あり航海あり登山あり農業あり。盛り盛りの、盛りだくさんだ。一粒で何度も美味しい。

確かにね、匂いというのは意外と重要な情報だから、本書の現実を前にして考えると、農業知識の発展にも役に立つのかもしれない。現実的にはセンサー技術で解決するか、異常臭覚発達者の出現に賭けるか、犬に人語を喋らせるか…日本のフードテックでの最短距離を考えてしまう。いや虚構なんですが。

虫害はちょうどバッタ本を読んだ後だったので、なるほどこう使うのかと感心した。あと発芽の話は何だっけ、読んだ本を思い出したがタイトルが出てこない。短編集の、結縄の話だったような気がする。

物語としては壮大な世界だが登場人物はそれほど爆発してないしだいたい友達、移動も頻繁で世界の距離が近い。でかい会場でマイクも使わずにあの会話量はマジで凄い。最後の方の暗殺未遂女はどうなったんだろう。助けたいみたいな意思は示しつつ、とっくに殺されてるかもな。