君が手にするはずだった黄金について (小川哲)
なんというか、プロローグがここまで良い小説は珍しいんじゃないか? これだけで完結してもいいくらいの物語。短編集だが、著書自身のような読書家の小説家が語る、虚構なのか自伝的小説なのかエッセイなのか。そんな感じ。
文章はかなり上手かった。記憶改変は誰にでも起きること。
私は裏主人公の片桐とババを思う。虚飾に彩られた社会との関わり。虚構の魔術師並のスキル持ち著者の記憶が都合よく改変されがちな状況からの描写だけどさ、そこは差し引いたとしても、どういう人生だ。自分でない何者かになろうとして、それが叶わない苦悩なんてのは、ディックが好むテーマでもある。
それはそうと、わたしも思わずデイトナの偽物の見分け方を検索してしまった。腕時計の良し悪しなんてロクに考えたことなかったな。高いのがあるのとか偽物があるのとかは知ってるけど、何がどう、というのはよくわからない。工業製品なのに、普通に予約なり注文してお金を払う、では購入できないものがあるんだな。自分はG-SHOCKを使うこともあったが、あんまり頻度は高くなかった。今はfitbitを装着している。これは寝るときもつけている。充電と風呂の時以外は外さない。
しかしなんとまあ、こんな小説家がいたんだな。他の本も読みたいところ。話題作もいくつか出てますね。いずれ読んでいこう。