新釈走れメロス 他四篇 (森見登美彦)
自分には激怒したことを相手に伝えるために考え抜かれたフレーズがある。
「激怒させたらメロスかオレか」「マジでやばいよ、オレが激怒すると」「天は落ち、地は割れ、海は干上がり、世界は闇に包まれるよ?」
そんな与太話はいいとして、ご存知、初手激怒のあの男がタイトルにある。その実、堂々たる主人公は京都の李徴子こと斎藤秀太郎さんだ。天才的!
えー、京大文学というジャンルはあるのかな? あるのなら、そこに属することになるのだろう。
名作を下敷きにして独自の解釈を加える…これが商業で許されるのか? 許されちゃうんだよなあ。まあそこは解説にあるように、元にした名作自体にさらに元のお話があっての改作が名作になっているのであって、本書はさらにそこからこの著者がやった、という感じのアングルになっていて、慎重に選択されたラインナップであることが分かる。逃げ道を作ったのかなあ?
わりと面白かったよ。主人公の強さもあるし、詭弁論部の面々もいい味を出していた。