出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 (宮崎伸治)
英語の本を日本語に翻訳する翻訳家が遭遇したトラブルの数々。ベストセラーも持っているし、多くの本の翻訳、著書も多い。主にビジネス書の系統かな。優秀な方だったんでしょうね。
そして翻訳業から足を洗うに至った経緯が描かれている。厳しいもんだね。単独で本人訴訟やった話はかなり凄かった。これでは精神が削られるのも道理だ。終盤はどうにも壊れていく過程がよく分かる。これは書いてて辛かったかもしれないね。まるで魔境だ。
私も実は出版業界を少しだけかじった人間で、出版社が割と大手だったためかコンピュータ業界の技術系の本だったのも影響してか、特にトラブルはなかった。あと主な活動が出版不況が来る前だった、というのもあるかもしれないし、本業を別に持っていたので気軽だった、という事情もある。最初の頃は間に立っていた会社があって出版社と良好な関係だったり、共著者が別の会社の社長だったので契約面もしっかり見ていたこともあるか。色々要素は考えられるが、不幸はすぐそこに転がっているし、避けられたのは自分の力ではないと思うなあ。
実際のところ、私も出版契約書ってのは執筆に取り掛かる前ではなく、本が出る段になってから結ぶものと聞いていた。理由として説明されたのは、先に結んでしまうと、もし著者側に事情ができて書けなくなった場合に違約金を請求されたりするわけだけど、そういうことはやりたくないし、ちゃんとやりますよと。そして相手は自分よりもずっとまともな社会人で、仕事は丁寧にやってくれた。ので、結果的には正しかった。こっちも、書けなくなったことは、なかったけれども。