ある誘拐 警視庁刑事総務課・野村昭一の備忘録 (矢月秀作)
被害者との接点なしの難事件に、久々の現場に出る。現実世界でも、虚構世界でも、なかなか成功しないよね、誘拐って。作中にあるようにランサムウェアのほうが成功率が高い。まあその場面は、だいぶ非現実的な描写だったが。
描写を見るに、身代金の受け渡しを考えると犯人を捕まえるのはイージーだと思った。シンプルにビットコインでも要求すればいいのにな、という感じがする。やっぱ時代はマルウェアだよな。物理人間の誘拐なんて割りに合わないよ。
途中から暴力が過ぎて、きついなあ。いいやつから順番に死んでいくし。説明的な記述も増えていく。しかも、IT関係者への風評被害もひどい。見てられない。こんな創作物を許してはならない。殺人都市川崎を思い出す。だいたいこんな戦闘能力の高いIT経営者や幹部が揃うかいな? 複数の警察官を倒したり、狭い車の中で殴り合いなんつー難度の高い技巧をね? 無理がある。解決も苦い。主人公やその相棒っぽいのが出てきたけど、キャラクターもぼんやりしている。