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山椒の実

日本一長く服役した男 (NHK取材班 杉本宙矢/木村隆太)

無期懲役囚が60年以上服役した後、仮釈放される。21くらいで強盗殺人を犯してしまった男。戦災孤児となり施設で育った、無慈悲な神の配剤。NHKらしい、丁寧な作りですね。被害者の遺族や刑務官、他の仮釈放者、受け入れ施設や何やら、取材を広げて事実を提示していく。

最後は反省とは果たして何か…みたいな話に持っていくんだけど、それはそれとして、20か80までか。人生の大半を社会から隔離された人生とは、どんなもんなんだろうな。この人は入る前も脱走者がたくさん出るような孤児の施設にいた期間もあり、自由に生活していた期間は非常に短い。自由というものを理解できないのも仕方なくて、一見不自然とも思える反応は、実は自然なものだったんだろうな。

今は無期懲役だと30年は出てこれないようになっているが、この人が入った頃は違っていたり、社会情勢の影響も大いに受けている。この人はもともと孤児だったという事情もあるが、長期になると引き受ける親族もいなくなるケースも多いだろう。そもそも孤児であるということ自体は罪ではないわけで、親族の有無で扱いが大きく違ってくる現状には論理が通っていない。介護が必要な体になってくるとまた難しさは増す。

まあもともと仮釈放で出てくる率はそれほど高くはなくて、多くの無期懲役囚は出てくることなく死んでいくらしいのだが。刑務官サイドから見ると、少しは希望を与えなくては管理が難しくなるという事情も語られていた。