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山椒の実

ネット右翼になった父 (鈴木大介)

今まで私が読んだ中でも、脳梗塞の話振り込め詐欺グループの話など、自分の経験や社会問題についてノンフィクションの良い本を残しているライターが、父を看取った話。タイトル通りだ。彼の父は、晩年にネット右翼になってしまったのだ。本当にそうか? 私も当時読んだが、週刊誌に寄稿した文章はかなり話題になっていた。

しかしですね、読み終わって思うに、タイトル詐欺? 「ネット右翼になっていなかった父」じゃないですか。あるいは、「息子にネット右翼ってことにされたまま死んだ父」? そのほうが売れたんじゃないのかな。一見ネトウヨのようでいて、実はそうじゃないケース。「誰が父をネット右翼にしたのか?」でもいいか。タイトルしか読まない読者もいるんだよ、と逆ギレしたくもなるよ。実態と、ほとんど真逆ではないか。

総合的には、自分は恐怖を感じた。彼の父に自分を重ねる。将来、息子から見てネトウヨ(あるいは別の下らぬカテゴリ)に見えるような言動をするようになるのだろうか。内面が違うとしても、この著者のような理解力のある人物で、本書で語られるようなお茶目な父親で、肉親にしてそうなる。立派な死を死んで、そしてネトウヨの烙印を押されるとは。

しかし、この俺がか? 老いやコミュ障によって? ありうるのだろうか。