銃・病原菌・鉄 (ジャレド・ダイアモンド)
人類史の概略を示して論考を加えていく。結局のところ、我々とは何なのか。再現性のない長い歴史から何がわかるのか?
人類到達の時期と大型動物の絶滅と家畜の存在、資源と軍事力の差、農業と定住による人口増加がつながっていく。あくまで一度しか起きない物語と、その捉え方が全編を貫く。
支配するものとされるもの、どうして差がついたか…慢心、環境の違い? 慢心ではない、環境だ。人類史における民族や地域の差は、環境からくる必然で説明できるのだ。
人類、アチコチの大陸でかなり多くの大型動物を絶滅させてきてますが、ちょうどいい時期に進出したことと、ちょうどいい家畜向けの動物が住んでいたユーラシア大陸が奇跡なのか。
太平洋の島々の紆余曲折はなかなか興味深かった。著者がこれを一種の実験と捉えるのも頷ける話。
南米については、文字もないのに何万もの軍勢を組織できたというのもすごいのだが、その相手を卑劣に欺いて圧倒したのもすごい話。事実はなんとかよりもだいぶ奇。ユーラシアの荒波で練り上げられた病原菌ばら撒いたという要素も大きかった。
農業について。メソポタミア文明が発展した肥沃三日月地帯は現在は紛争の煮凝りみたいになっているが、現在の人類にとって最も大きな出来事だったんだな。
どうして地域によって差が出るのか。見た目は人種の違いであって、当時の貧弱な知性では、その差が地形や環境によるものではなく人間の種類によるものだと考えるのも無理はない。それを宗教の力で教化して文明化したのも事実なんだろう。だか我々は今やこの本を得ている。この本の知見を得て何年? かなり経っているわけだよ。その我々はどうなんだと。それを思うんだ。この本は、そう思わずにはいられないような構成になっている。いい本を読んだ。
アインシュタインのような人物も、環境が生んだだけ、と言えるんだろうか。努力や資質ではなく。言えるんだろうなあ。