令和元年のテロリズム (磯部涼)
「ルポ川崎」の著者が、令和元年に起きた大きな事件の犯人の人生を深掘りしていく。その筆致は暗い。
取り扱うのは以下の4件。
- 溝の口で送迎バス待ちの小学生と親を刺し殺したやつ
- それを見てゲーマーの息子を刺し殺した元政府高官
- 京アニの放火犯
- プリウスミサイルの老人
実際に読んでみると知らなかった事実も多々。
著者みたいな人が深掘りしないと背景や主張は理解されないし、主張自体も政治的な側面は皆無で、底辺や上辺を生きる犯人が、それぞれ異なる事情があって起こした重大事件。共通点が見あたるかというと、難しいと思う。単に時期が近かっただけであって。最初と2個目は関連があるとしても、報道に影響を受けた(逆)模倣犯みたいな感じ。テロと言ってしまうのはちょっと違うかなと思う。それとも、令和最新版の「テロリズム」の定義が、こうなっていくのだろうか。違和感がある。
完全なる謎になってるのは最初の犯人で、世捨て人で世間との接点がほとんどなく、同居親族とのコミュニケーションすらなく、現場で自殺。過去に麻雀が上手かったらしい…という程度の情報しかなくて、あとは想像を膨らませるくらいしかすることがないという。
この本を読んだ私は、それぞれの人生を思う。そして彼らの人生を自分と重ね合わせてしまう。彼らは確かに狂人だが、特異なこととは言い切れないんだ。