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山椒の実

老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体 (鈴木大介)

振り込め詐欺グループの実態を記したもの。金持ちの老人を騙して小金を受け取る。それは現代の義賊か、それとも…?

かなり高度に組織化され、分業も進んでいて捕まりやすい部門(受け子)を何重か噛ませることによってプレイヤーと呼ばれる騙し屋の部門は捕まりにくくなっているらしい。そしてこの本の時点でオレオレとも言わないし振り込みさせるってワケでもなく現金取引らしい。ターゲットをかなり詳細に調べた名簿を使う&自前で名簿の情報を充実させる調査を入れたり。

必須の要素が「名簿」「道具(飛ばし携帯)」「プレイヤー」「受け子」。読んでこいつらを倒す方法というのを考えるんだけど、、、

  • 「道具屋」つまり飛ばし携帯を売る人たちを押さえる
  • 受け子のグループを地道に叩いていく

くらいだろうか。どちらも微罪なので叩いてもキリがないというのも分かるけれども。名簿に関しては流出したら取り返させるもんでもないし、情報の追加はソーシャルハックみたいなテクニックを駆使しているようなので、防ぎようがないだろう。プレイヤーはここで描写されているようなやり方だとたどり着くのはキツそう。ただ道具がなければ商売を始められないし、受け子がいなければ商売が終わらない。

ところで、自分はこれまで、振り込め詐欺をかなり重い犯罪だと評価していた。さすがに殺人みたいな犯罪とは比べものにならないほど軽いだろうけど、人間の不安感や親切心を利用する憎むべき犯罪であると。しかし番頭は罪悪感を感じたことがないと言う。前職の不動産屋では貧乏人に返せるとは思えないローンを組ませる合法行為に罪悪感を感じてきた彼が。

実際この手の詐欺の被害者って、老人の富裕層だけなんだよね。

現代日本において、カネを貯め込んで使わない老人が経済を悪化させているという面は否定できなくて、詐欺にも少しの正義があるとする気持ちも分からないではない。

自分も、親が騙されたとしても借金を残すほどじゃなければ別にいいかな…と思っていたりして。どうせなら年齢相応に有意義なカネの使い方を知っていてもらいたいものではあるが、それがなくて使いきれなかったカネを愚息の私に残すってのもつまらない話。土地だけ残されて相続税で詰む…これもシナリオとしてはありうるかもだけど、そこはトータルでなんとかなれば。

ただ借金はマジで残さないでほしいw

こっちも使うアテのないカネを溜め込んでるわけじゃないからさ…

鹿サポのくだりは確かに笑った。本人は大真面目なんだろう。私はいくらフロンターレのためでも詐欺はやらんな。だが生きるためにどうしても必要なら、やるだろうね。そしてそれを正義だと言い張るだろう。だってあいつらは使いきれないカネを…まさにそこで、詐欺グループの論理に共感してしまっている自分を見出す。