Skip to main content

山椒の実

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (鴻上 尚史)

特攻隊で9回出撃して生き延びた、佐々木友次さんの話。そういう人もいたんですね。すげー。その話は生々しい。

素人の司令官に宴会に呼ばれたせいで出撃することなく死んだ隊長。その隊長が残した爆弾を解き放つ仕掛けを使い、爆撃を成功させて戻る。すると上の人が面罵するわけです。で、とにかく死んで来いと命令されて何度も出撃するが、色々あって戦果は上げつつも帰還を繰り返す。

その司令官は「自分が最後の機に乗って特攻する」と常々宣言していたが、戦況が悪化すると真っ先に味方を騙して勝手に逃亡するというね。

最後の方は性能が悪い練習機で出撃させて(何の戦果も上げる見込みのない戦法)、次々にやられていったらしい。

私の特攻隊の評価というのはまあ、著者の印象と近いものがあるね。死に向かった奴自身が悪いとは思わないんだけど、作戦としてはクソそのもの。立案して実行を準備した奴が悪い。裏切り者かな? 戦果を過大に報告して宣伝したやつらも万死に値する。そのせいで引っ込みがつかなくなったという要因がある。ただその要因があるとしても無意味な作戦を継続させた判断はウンコだね。

この旧制日本の負の側面は今でも残っていたりするんじゃないのかな。繰り返したくない歴史をどう繰り返さないか。そのためには必要な議論ではあるよね。そして命令したやつ(加害者)を非難すると、命令されたやつ(被害者)の話を元に反論されるというね。それで噛み合わない。

私は学生時代に、知覧の特攻隊基地跡に行ったことがあります。当時父が鹿児島に勤務していたんで、遊びに行ったら案内してくれたんですよ。シンプルに、ここの基地から出撃して、みんな死んだのだと私に告げました。私は黙って遺書や寄せ書きを読んでいました。その父は終戦直後の生まれ。彼がその時何を思って息子を案内していたのか。もう聞くことはできなくなりました。

私の感想は「なんじゃこりゃ」で、こんな世界もあったのねという衝撃は受けました。当然、私はそこそこの学歴の持ち主ですから、知識としてはあったんだけどね。実際に縁のある土地に行って人物を本物の人物と認識してしまうと、そりゃね。で、帰ってもうちょっと調べて「クソ作戦」と判定しました。