許せないを許してみる 籠池のおかん「300日」本音獄中記 (籠池諄子)
こういう本好きなんすよねー私。世間を大いに騒がせた、大したことのない事件。何かの間違いで政局になり、異常に長い拘留期間…理不尽の塊のような扱いを投げつけられた夫婦。その夫人の方の手記。形式を見ると、拘置所で書いていた手紙を活字化したみたいですね。なんというか…とにかく素晴らしい出来だった。1月からこいつを読めるとは、今年の読書体験もなかなかのクオリティを保てそうで嬉しいよ。
あー自分としては夫の証人喚問の答弁が立派だった、というあたりで興味を持っただけで、この事件の情報を追いかけていたわけではないです。そんで大枠だけ知って「しょーもない事件の処理を間違えて大騒ぎしてんだな」くらいの感想を持った状態ね。あと帰宅ルートで徒歩で国会前を通った時にデモ隊が大きな音を出していたこと、警備の人に「違うんです! 僕は怪しい者ではないんです!!」と必死で訴えたことを思い出す(←表現に誇張が含まれています)。
この本自体は記述は脈絡もないし、昔の思い出や内面のことばかりなのでつまらないと感じる人も多いかもしれない。ただ状況を知って読んでいくと興味深いわけよ。これだけ長期間責められて落ちなかったんだから、夫婦には信念があるに違いないと考えるわけですよ。実際に彼らはその時、何を思っていたのか。
まあ、信仰のある人は強いね、という感想も持つ。そこに強さが生まれるなら、手に入れるために何かを信仰してもいいかな、とすら思った。
事件そのものに関しては記述が少ないが、私には「売ったほうが悪い」としか思えないんだよね。役所側には早々に処分したい事情があったんだろう。焦った役所相手に安く買い叩こうとすることは決して悪いことではないんだよ。この役人や役人の上司は何か処分されたのかな。何らかの処分があったとして、この夫婦はそれ以上の重さの罪にはならないと思うんで。