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山椒の実

AI vs. 教科書が読めない子どもたち (新井 紀子)

東ロボくんを作っていた数学者が、その狙いとこれから必要になる教育を語る。かなり話題になった本。

まあシンギュラリティは当分来ないよ、というのは実感としてあるんだろう。実際今のニューラルネットワーク系の技術だけで行けると思っている人は少ないとは思うんだよね。シンギュラリティに至るまでにあといくつかのブレイクスルーが必要というのは感覚としてはあり、ただしそのブレイクスルーの数はそろそろ指で数えられるくらいなんじゃないの、という感じでしょ。

で、教育だ。著者は様々なところで話しているので、だいたい内容は分かっていたが、それでも衝撃の大きい調査結果だよね。人類は読解能力が意外と低い。しかも教育政策は読解能力以外のところを鍛えようとしていて、それはAI技術が得意とする分野だから、勝てないよと。当分AI技術がカバーできない分野…つまり文章の読解力を人類が鍛えたほうがいいと。

しかし読解力の鍛え方についてはまだ未知のものらしいね。いろんな文章を使った読解問題を何度も解いていく…要は反復練習しかないと思うんだがなぁ。今の入試問題の読解問題だってそういう問題をデザインして能力を測定してるんだよねぇ。だから単に受験勉強すればいいって話じゃないのかな? ただ新聞の論説委員なんかは読解力低いとヤバそうだけど、実際テストすると低い人がいたとか。読めなくても生きていけるし仕事に支障がないものなのかもしれない、我々の社会は。

読解力重視を主張する本らしく、文章は読みやすく書かれている。非常に。これで悪文連発だったら「その前にお前の貧弱な記述力をなんとかしろよ」と突っ込むところだからねw で、主張は明快でファクトもしっかりしていて実績も知られている…とあれば説得力は絶大だ。

しかし私は小動物の全脳エミュレーションくらいまでなら、じきに実現できるだろうと思っている。その延長で大型動物も行けるはず…そしてその先がシンギュラリティに繋がるとすれば、計算機の得意不得意…数式がどうの…なんて小さな話だという感覚もあるんだよね。今のニューラルネットワーク系のやり方ほど効率は良くないだろうけど、規模の暴力でなんとかなるんじゃないのかね。計算機屋さんや数学屋さんは全脳エミュレーションとかは苦手だろうけど。