Skip to main content

山椒の実

ロング・グッドバイ (レイモンド・チャンドラー)

言わずと知れたハードボイルドの古典的名作を村上春樹というハードボイルドファンの著名作家が翻訳し直した。元の翻訳をほとんどの読者が知っているだけに、どういう変化があるのか、その変化には必然性があるのか否かというのがどうしても気になってしまい、ストーリーに入って行けるのか自信がない…というのが読む前の心配事。

強引に例えれば…今の「君が代」を現代語っぽい「てにをは」の歌詞に微妙に変更して、それが新しい国歌だと教えられている気分?

だいたい「ロング・グッドバイ」という邦題がひどいよね。最初に「長いお別れ」という、意識しないワケにはいかない訳があるわけで。カタカナ…一種の「逃げ」では? という感想を持ってしまいますよね。

まあストーリー自体は破綻した金持ち達の中で見事に立ち回るマーロウ、というアレなんで結末まで全部分かって読む人ばかりだと思います。文章自体は流石に著名作家だけあって上手い。私は聖書のように何度も読んだわけではないけれども、特に名場面はどうしても元の訳だとああだったよな…と思い出しながら比較する視点を持ってしまうので、純粋にストーリーを楽しむことができる環境にないということは思い知らされた。

最初に読むチャンドラーが村上春樹訳の版だったら楽しめるのかもしれませんね。そういう意味では、後世に残す価値はあるんじゃないか? それは思いましたね。