教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (内田良)
柔道や組体操の事故について警鐘を鳴らしていた学者の著書。Yahoo!ニュースとかでよく見ていて、かなり妥当な論述だと思ったが、その秘密はエビデンスを元に議論する社会学を源流とするためだった。実際、柔道の重大事故率については著者も最初はそんな風には思っていなくて、データを集めて分析したら理不尽なくらい突出していたという話。おかげで、子供の柔道の事故死は日本でも根絶されたようです。成果ですね。
この本で特筆すべきは、教員のことについての分析も含んでいる点。やっぱ活発な部活動の顧問の先生はきついよね。私は中学時代は水泳部で柄にもなく部長をやっていたわけだけど、顧問の先生が途中でいなくなったので、別の体育の先生に顧問やってくれと同期と一緒に直訴に行ったことがあった。元の先生も決して熱心ではなく水泳の知識もなかったのだが、顧問がいなくなると続けられないからね。で、実際は別の新任の先生がなってくれることがすでに決まってて、その先生は経験者だったこともあり、かなり熱心に指導してくれた。頼んだ先生は副顧問みたいな感じになって、結局フェードアウト…
今思うに部活ってのはやはり理不尽な世界で、私は小学校時代にクラブチームの選手コースにいたわけだが、その時代と比べても競技上のことで良かったと思えることは少なかった。競技の指導ってのは学校の教員がやるべきことではなくて、専門性が高いわけだから、そういう人を雇えばいいんだと思う。水泳なんてスイミングスクールにコーチを派遣してもらえば済んだと思うし、他の競技でもある程度メジャーなものであれば似た方法を取れるだろう。予算は必要になるけども。
この本では、そういう専門の人を雇う方針になった大阪のケースについてのリスクも指摘している。というのは、生徒、教員、保護者、そして専門の人に、どのくらい練習すべきかというアンケートを取ったデータがあるらしい。生徒と教員は同じくらいで、週5日くらい(土日休み)という感じなのに対して、保護者や専門の人はもっと過酷な練習をさせるべきという考えの人が多いらしい。普通に考えて教員に土日も練習を見させるのは無理があるけど、実際は熱心な部活は土日もやってるらしいね。それは教員からすれば「生徒がやりたがっている」生徒からすれば「顧問がやろうと言っている」真実は「生徒でも顧問でもなく、親がやらせたがっている」なんだと。柔道の例でも、重大事故を起こしているのは専門の人達が多かったというデータもあるみたいで。
トレーニング理論で言えば、私は超回復には48時間以上の休息が必要という定説を信じていて、週4〜5日というのが妥当な線だと思うけどね。休みなしとか週6は多すぎて、成長が妨げられる。週6やるとしたら体力系の練習日と技術系の練習日を考えてスケジュールを組むのが前提になる。筋トレだけの日だったら、メニューだけ知ってれば顧問やら専門の人がついている必要はないだろうし。