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山椒の実

東大助手物語 (中島 義道)

随分昔に東大助手だった人物が、当時の変な教授にいじめられたことを記した自伝。

うーん、この著者も相当な変人なんだというのは伝わってきたけど、教授も変人。まあ東大の教官なんて変人でなければ務まらないよね。結局教授の理不尽な要求に耐えかねて上の人に直訴して決着をつけるんだけど、学者の喧嘩ってのは学術的にどういう位置にいるかによるんだよね。この著者はカントの研究でそれなりに実績を積んだ優秀な学者という感じの立ち位置で、対する教授は大した実績がなく、地位はあるけども研究している風でもない。

となると両者が喧嘩したら、そりゃ社会的な地位は期間雇用の助手と終身雇用の教授では隔たりがあって教授の方が圧倒的に上なんだけど、喧嘩になってどっちを残すかっていう話になったらそこは考慮に入らない。学術的にどちらを残すのが人類にとって正しいのか、という視点になる。

それはスポーツの世界にも似ている。シビアな側面。本業で活躍する奴が常に偉い。学者ってのは研究して論文を書いて実績を積んで力をつけるのが王道なんで。

あと、ドイツ語教師ってのはやっぱりどこでも哲学を志した人がなる職業なんだね。高校時代のドイツ語の先生(担任だった)がそうだったし、大学でもドイツ語の先生はそうだった気がする。