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山椒の実

ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (ダヴィド・ラーゲルクランツ)

あのシリーズの最新作。著者死亡で終わったと思っていたが、出版社が新たな著者を見つけてきた。ビジネス。

まず疑問に思うのが、楕円曲線でRSAの素因数分解を解けるものなのか? という話。私もこのへん詳しくないんだけど、楕円曲線暗号とRSAは互換性ないと思っていたので、楕円曲線を頑張って素因数分解の暗号を解けるとは思えなかった。まあ割と調べているっぽい著者ではあるから、問題ない記述なのかもしれないが。あとNSAの描写はダン・ブラウンの問題作「パズル・パレス」を彷彿とさせる。こういう人々の描くテクノロジーの記述に関しては割とトンチキな感じもするんだよねぇ。こんなやついねーよ。前著者のスティーグ・ラーソンはコンピュータに関してはここまで破綻せずに書けてたと思うんだが。

まあ別の著者を見つけてきた、というのはそれだけで不満に思うファンは多いんだろうな。私は、これはこれでこういうものだと思って普通に読んだが。アクションもあり、含蓄もあり、前著者のメチャクチャなプロットも活かされているし、伏線も回収できているし、悪くない出来だと思うしね。出版社もいい人見つけたんだな。

今回は流行り物としてAIが絡んでいて、あと自閉症と何とか症候群を絡めてきた。神なら自分より賢いモノを作れたのでは、みたいな話とかはなるほどと思ってしまった。AIの人はそういうことを考えているのかもしれないね。

そしてこのシリーズにつきものの、同一血族に変人多すぎ問題。前作もそうだったけど、今作も。遺伝子を曲解してるのでは? こういう話、日本では金田一耕助が出てくるところだよねー。

巻き込まれた方の学者もある程度かわいそうなことになると予想してたんだが、そんなこともなかった。いい思いだけしたという…そして、そこで前途ある若者が犠牲になるのはどうなのか。そういうところまで前著者と似せなくてもいいのにねぇ。