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山椒の実

神様のリング (林 壮一)

亀田昭雄とアーロン・プライアー、2人のボクサーの人生と再会を描く。すごく良い本だった。亀田昭雄は身体的にも恵まれた天才ボクサーだったが努力せず、マッチメークがクソだったこともあってやる気を失っていく。弱い奴には適当にやっても勝ててしまうし、弱い奴としか対戦できないからどんどん努力しなくなって泥沼にはまっていくパターン。天才ゆえに練習しなくても勝ってしまうんだ。そして世界ランキング1位、指名挑戦者として初めて挑んだチャンピオンが稀代のボクサー、歴代パウンド・フォー・パウンドの上位として議論されることになるアーロン・プライアーだった。両者、情報がなかったり準備期間が乏しい中で対戦し、相手の意外な強さに驚き、驚きつつ拳を交えて。

プライアーとしても実力と比べると順調なキャリアとは言えずマッチメーク的には不遇で、実力的に格下の相手がどんどんビッグファイトをモノにしていくのを指をくわえて見ているしかなかった。亀田戦はプライアーにとっては渇望していたビッグネームとの試合の前の前哨戦という位置付けだったのだが、この挑戦者の実力をいつまでも忘れずにいて、特別に思っていたようだ。亀田は亀田で最強のボクサー、プライアーとの再戦だけを望んでボクシングを続けるもそれは叶わず第2の人生へ。プライアーも栄光は一瞬、搾取されドラッグや何やらで落ちぶれていく。その引退後の人生の好対照も。

米国の花形ボクサーはかなり落ちぶれる率が高いみたいですね。タイソンの本を読んだ時も感じたけど、ボクサーは搾取されすぎですよ。頭が良くないし簡単にドラッグに手を出すというのも原因ではあるんだが、それにしてもピザ屋のオヤジがなんで引退までのファイトマネーを半分持ってく契約を提示してんだよ!! サインする方も問題だが、だからって若い脳筋ボクサー相手にそんな契約を提示するのが許されるか??

著者は日本人だがアメリカを拠点にしているので、プライアーとはよく顔を合わせていたようだが亀田とコンタクトを取るのには苦労したようだ。調べると他の著書も悪くない評判。なるほど。

そして読み終わった後にYouTubeでその試合を見て、ふーむなるほどこの試合か、と。確かに印象はこの本に書いてある通りで、プライアーのキレはすごいし亀田の方もなかなかのものだ。