インテル 世界で最も重要な会社の産業史 (マイケル マローン)
インテルの歴史本。3人(2人+1人)の創業者の系譜をたどる。ショックレー、フェアチャイルドから始まって今に至るまで。
まずこの本は文章量が多い。内容量と比べると文章量が多すぎて、技術者が読むとストレスを感じると思う。たぶん一度に書かれたんじゃなくて、長期連載か別媒体で書かれたものをまとめた、みたいな本なのかもしれないな。何度も同じ話を蒸し返すし、名前の表記も一定していない。時系列も頻繁に前後するし。名前の表記については、グローブの生い立ちからの話で名前が変わるのはわかるんだけど、それ以外のところね。
ノイスとグローブ、特にアンディ・グローブについてはかなり深掘りしてますが、ムーアについてはあまり書かれてないですね。あと3人の神格化のために後継者をクソミソに書いているのはいただけないな。
選んだエピソード、テーマとなったインテルという会社が魅力的だからどうにか読ませる感じ。綱渡り、勝負の連続。何度も負け、何度も勝って今のインテルがある、というね。非常に興味深い話も多かった。しかしムーアについてはもうちょっと書けなかったものか、という気もする。IntelとAMDの関係についてもなるほどと思わせるものがある。単にトップが個人的に仲が良いか悪いかだけだった、という。アメリカっぽい話。
私が初めてIntelを意識したのはPC-9801です。それまでほとんどリクエストを出さなかった誕生日プレゼントに「パソコンが欲しい」と言ってみたら買ってくれたもの。割と奮発したんだな、ということが大人になってからわかった。NECのパソコンで、V30という8086の互換チップが入ってたんだ。80186の命令セットも実装されていて、pusha/popaとか便利なインストラクションも使えたことを覚えている。MS-DOSも別売りだったのを小遣いを貯めて悩みつつ買ってきて、お年玉ですげー重いハードディスク(20MBくらいだったかな)を買って雪の道を歩いて帰ったり、マウスも後から買ったなぁ。カーソル表示するだけで一苦労でしたよ。プログラムから使えるようになってからはいろいろやったなぁ。今考えると貧相なボールマウスだった。当時はHDDはSCSIとSASIがあって、SASIのカードをセットで買う必要があった。内蔵みたいに電源が連動してないし、ケーブルやコネクタも使いにくかったけど容量やアクセス速度はフロッピーディスクの比ではなかったのでありがたかった。
ソフトウェアも、最初はN88-BASICの次がMS-DOS上のアセンブラしかなくて、そのあとC言語…LSI-C試食版で遊んだり、しかしメモリが足りなくなったのとC++試してみたくてBorlandのコンパイラをやっぱり頑張って買ったりしたなぁ。結局C++を使うようになったのはだいぶあとのこと。今思っても当時はクソみたいな機能しかなかったのでC++に行かずに素直に育った自分はセンスがあるよね。編集環境もedlinとか言ってた頃がすぐに過ぎ去ってvz editorが出て、今思うと異常な書式のマクロをたくさん書いたなぁ。
当時の事はこの本にも書いてあるけど、68000とかZ80とかがライバルですよ。8086は…全然エレガントじゃなかった。でも勝者にはなった。今じゃMotorolaなんてGoogleに買われて売られて、どこいったんだろう。ザイログももうないよね。結局のところ、ムーアの法則に沿って走り続けなければ死ぬ。法則に遅れても死ぬし、飛び越えても死ぬ、ということが語られている。最近は鈍ってきてるんじゃないかという気がするが、どうなんだろう。
…なんていう昔話をしても誰も喜ばないんですけどね。年寄りになったんだな、俺も。しかしあのV30マシンがなければ今頃俺は何をしてたんだろうな。ソフトウェア系の技術者には…なっていなかったかもしれない。
これでMS、日本のインターネット、Unix、インテルと読んできて、コンピュータの巨人たちの歴史書にはそろそろ食傷気味に。今後は未来の本を読みたいよ…と言ったそばからジョブズの伝記とか読みだす可能性があるのが怖い。