Skip to main content

山椒の実

新訳 ガリア戦記 (ユリウス・カエサル)

あのカエサル本人が書いたベストセラー。ローマの英雄ね。淡々と平易な文章でガリア戦争の経緯を書いている。勝ち戦も負け戦も、感情や自慢をなるべく交えずに1段上から書いており、非常に良い。わかりにくいのは人名くらいで、臨場感があって読みやすいのもいい。カエサルがこんな本書いてたなんて。これからはシーザーサラダももっと味わって食おう。

司馬遷の「史記」もそうだけど、現代の小説や歴史書と読み比べても、読み物として優れており、俺達は一体2000年以上も何をやってたんだと思わなくもない。紀元前にこれをすでにやってたわけだ。ほんと、進歩してないよね。

ガリアというのは今の西ヨーロッパのほぼ全域? くらいの広い地域を指す地名で、ゲルマニー(ドイツのあたり)やブリタンニア(イギリスのある島)、ベルガエ(ベルギー)など各地を転戦してカエサルが平定したんですね。押しも押されぬその功績でのし上がっていくわけ。で、元老院と敵対して内戦状態になって勝つんだけど、この本は内戦になる前までの話。

いくつもの戦いがあるけど、最後の攻城戦はなかなか凄い。ビジュアル的にも。糧食と人口を見極めて敵の総大将ウェルキンゲトリクスがいる頑丈な城を囲むことにして、ローマの軍隊というのは工兵が凄いのが特長だから土木工事で囲むんだけど、それを大軍が救出に来るわけ。そこで外からの脅威に対抗して外側にも土塁を作って籠城する。内と外に囲まれて両方の敵に当たる。全ガリアを相手に一歩も引かないカエサル。エース級の副官ラビエヌスもいたりして、最後はその副官の策でカエサルが激戦の中で囮のような役割をして外側の大軍を撃破して壊滅させる。中のガリア軍もそれを見て諦めて降伏する。

詳しくはWikipediaの「アレシアの戦い」を参照のこと。というかこの項目も含めて、この頃の歴史の記述はほとんどガリア戦記の内容そのまま書いてあるだけ。そのくらい貴重で正確な一次資料であるわけだ。しかも小難しくない。とても読まずにはいられない。