本当に意外な良い出来の小説で、普通に面白い。映画化もされてたそうです。
前の「陰日向に咲く」もだいぶ以前に読んだけど、悪くなかったなぁ…冴えない男が人の思いというものを知っていき、最後はちゃんと辻褄も合って、スッキリした読後感を誘う。なんていうか、安心して読めますよね。文章自体も読みやすい。
私も子供を持つ身になってみると親のありが云々…というテンプレート的な話は置いておくと、子供の価値というのは「成長すること」と「必死になれること」だと思います。観察してると、生まれたときからあらゆることに必死ですからね。息するだけのことでも、精一杯、一生懸命やってるの。成長していくと歩くのも走るのも泣くのも遊ぶのも、必死になってやる。そういう気持ちがいつまで続いてくれるのかな、と思っているし、親としてはちょっと付き合いきれんなと思うこともある(笑)。
この主人公は必死さを失ってまた取り戻して、人の心を知ってまた成長したわけだ。全体としては失敗しているんだけど、という描写だが、なんというか、うまく書ける気がしないけれど、何かと考えさせられた通勤電車での読書体験だった。