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山椒の実

コンビニなしでは生きられない (秋保水菓)

コンビニ人間の続編、というわけではないが、コンビニ文学の一角を占めるポテンシャルがあるのではないか。そう思って読み始めたライトな推理小説。

大学中退フリーターと新人女子高生のコンビが、コンビニで起きる数々の事件を華麗な推理で解決していくのだが、そこにある裏の意図が…

なんだかなあ。主要キャラクターがどうもなあ。冴えないフリーター男性にグイグイ来る言葉遣いの変な女子高生書きたかっただけなんじゃないの。あざとく狙いすぎて逸れたみたいな感じだった。イライラしますよね。

サブキャラはまだマシだけど、全体的には主人公に優しい美女が善キャラでそれ以外がワルあるいは影が薄く、イケメンは死ぬ…ああそういう話なのね、と。そう思うとどこまでもアホらしい。

カエルの小指 a murder of crows (道尾秀介)

まさかの続編。前編から10年後? くらいあとの話で、前作で亡くなった男は墓の下にいた。代わりに出てきたこやつは何者か…なるほど。

今作もなかなかよろしいハードボイルド詐欺師小説だった。叙述トリックは相変わらず、キャラクターも相変わらず各自ベストを尽くし、それぞれ活躍した。まさか、あいつまで出てくるとはね。みんな幸せになれよー。前作で活躍したデブも頑張った。

いい本読んだなー。

ただ、情報がダダ漏れってのはいただけないな。この点も、前作に引き続き。隠そうとして、そのせいで漏れる。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (道尾秀介)

ハードボイルド詐欺小説。不幸の連鎖の行き先は。スリルとサスペンス、アクション。そして観察と記憶からの謎解き。かなり良かった。

無口な主人公も含めて、ちょいちょい軽快な会話をさせて叙述トリックを入れてきたりするのもいいねえ。気が抜けない。

登場人物が魅力的だよねやっぱり。こいつはさすがに無駄じゃねえか、と思われたデブですら手先が器用で魅力がある。マジで全員活躍するからな。過不足がない。どんでん返しもちゃんとしてるし、人生は不幸を抜け出して幸せに向かう。向かせる。最高だ。

無限大ガール (森絵都)

高校の部活、派遣部員として多くの活動をする少女。基礎能力だけで並以上の活躍をコンスタントにこなすうちに、虚無から無限大へと駆け上がる。いきなりそこまで? 勢いで押し切った短編。

失恋駆動型人間のパッションですなー。何者でもない、が何にでもなれる、に変化する。しかしそこまで追い込めるのか、このキャラクターで。短編ということもあり、少しキャラクターが単純化されすぎた感じもした。特に主人公。もう少し複雑な思いがあってもいいんじゃないの。それがないから虚無なのか。なぜないのか。

誰かが見ている (宮西真冬)

子育てとかそういう世界の話。不穏極まりないオープニングからは想像もつかない、いろいろなことが起きる。こんなことも、ありうるんじゃのお。一定のリアリティがある。

タイトル自体は「誰も知らない」というあの映画のアンサー的な? そんな感じなのかな。

しかし誰もが病んだ劇ヤバ世界のこの展開でハッピーエンド方面に向かうとは思わなかったな。意外で、しかも妥当か。

そんな本編の事件に関してはまあいいとして、ウサギ事件の解決に関しては不満がある。だって、かわいそうじゃないか。だって、ウサギだぞ?

ナベちゃんのヨメ (辻村深月)

短編。ありそうな話。まーそんなもんだよね、と。学生時代の無責任な友達の噂話、ライフステージのギャップ。

こいつらほんと陰口ばっかじゃねーか、と思っていたら主人公がしっかりやってくれた。さすがだ、偉い。幸せの形は人それぞれ。他人がとやかく言っても無意味で、陰口となればなおさら醜悪だ。それを感じさせない表面と、感じさせずにはいられない内面を描ききった。

お前たち、今後はナベちゃんではなく、渡辺さん、と呼びなさい。

おうむの夢と操り人形 (藤井太洋)

ロボットとかAIのSF。飲食店のネコちゃんとか、pepper君とか、あのへんをうまいこと組み合わせて作る。

短編だからな、あんまり書ききってある感じはしない。もっと文字数があれば変わったかどうか。このレベルの人物が、このレベルの出来事で20年ボーッと過ごすのはバランスが壊れていて納得がいかぬ。そういう違和感はあった。

だって20年だぞ!? 一人の人間にとっては、実質永遠だ。

勝手に覗いて幻滅すんなよ (微炭酸)

「えっ」「私たち」「電話の中身が」「「入れ替わってるー!!??」」て話。美術部の爽やかな関係性を闇が襲う。見るからに気が重いストーリーだなおい。

まーヤバイよね電話や個人アカウントの中身なんて。見ないのが吉なのは誰しもわかっていることだ。危険性が分かっている俺のようなエンジニアタイプの人間は電話やクラウドに即死的秘密を預けることはない。この感想文とかを途中まで電話でGoogle Keepで書いてるくらい。移動中やハンモックに揺られながら書けるからな。

人間に向いてない (黒澤いづみ)

カフカ系? 引きこもり若者が異形に変異する病が日本を包み込む。何かの比喩ではあるだろう。若者の心はどうしても傷つきやすい。大人も、傷つけようという感情を持ってしまう難しさがある。そんなことを思わない行動ですら傷つくのに。

変態が不可逆で死亡扱いまでは設定だが、そこから法事の話になるのはリアルだった。なるほどそう来るか。

こういう話でいつも思うのだが、変態する時に痛みがあるのどうかは気になるところ。かなり痛そうだからなあ。一夜にして、気づかぬうちに、ってことだけどそんな説明では無理がある劇的な変化だ。ある程度、麻痺するのかな。

観覧車は謎を乗せて (朝永理人)

謎めいた観覧車の複数の謎が解かれる。止まるのね、観覧車って。そんなに頻繁に止まる? 止まるんだなこれが。

止まってる間の謎解きは非現実的ではある。満足に身動きが取れず、取得できる情報が限定されすぎている。それぞれの推理の末にたどり着いたものが真相なのか否か。

これ、読んでるとき最初は謎が一つだと思ったんだよね。それをみんなで解いた形になるのかなと。しかし連絡もできないよなー、どうするんだろうなーと。

そしたら他にも次々に謎が出てきて…えーとこいつはこの状況で、こいつはこの状況で…最後は分裂したていたそれらの謎が統合されて行くわけだけど、、、