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山椒の実

噓つきは殺人鬼の始まり SNS採用調査員の事件ファイル (佐藤青南)

SNS裏アカ調査連続殺人事件。企業から依頼を受けて学生の裏アカを探して報告するという不幸しか呼ばない業務をする主人公。そこに内定取り消しを受けた女子大生が怒鳴り込んできた挙句、探偵を始める。なんだこの導入は。

いろいろあって連続殺人が起き、探偵コンビが犯人に迫っていくわけだが。ラストはなかなか切ないな。

まさかあの人がスイッチヒッターだったとは。こういうのがあると利き腕を推理の根拠にすることはできなくなる。いやスイッチヒッターだからこそ犯人になれる可能性もあるな。

だるまさんが転んだら (堀内公太郎)

小説の盗作に関する話。若干バイオレンス寄り? まあ作家志望や編集者は書きやすいんだろうなあ。

構造としては、専業の人たちがやっている世界を副業の人が荒らしに来る、みたいな話。むかしDJかなんかの人が書いていた文章を思い出す。俳優だかアイドルだかがゲストでDJやってくのを苦々しく思っていたのに、今は自分が副業で文章を書いて文筆業の人の世界を荒らしてしまっているのだ、みたいな。こっち来んなよと。

この展開で殺人が起きると思わなかったな。ちょっと安心していたら、最後はちゃんとミステリになった。

マトリョーシカ・ブラッド (呉勝浩)

神奈川県警、マトリョーシカ、遺体。なんという魅力的な3点セットだ。真相はいかに。なかなか良かった。舞台は私の地元に近い。現在はだいぶ様変わりしている場所が多いと思う。根っこは変わらないんだろうけど。

なんやかやで解決するとは思えない体制で事件が捜査されてゆく。誰もが隠したい、誰もが闇のままで終わらせたい事件。恐れを知らぬ、特技が顔色伺いな金持ち御曹司刑事がハードボイルドにその闇を暴く。感じた違和感を大事にするんだ。成長を見せてみろ。

絶望の底で夢を見る (石井光太)

優れたルポライターが、さまざまな困難を抱える人々を記述する。それぞれに深いものがある。

著者の祖父の話は良かった。他にもゴミ屋敷の話、震災の話、ハンセン病の話など。性愛の話もあったな。語りきれない、それぞれの物語たち。著者の状況も関係する。

カメムシのくだりはなんていうか、印象に残った。そんなことまで書かないでいてほしかったような、あるいはこの記述があるから心に残るような。

世の中には、どうにもならない困難というものがある。自分の力でもどうにもならないし、他人の力を借りてすら厳しい。そういう時、人はどうするのか。どうするにしても、どうにもならない。それが苦しいんだよなあ。

六人の赤ずきんは今夜食べられる (氷桃甘雪)

童話をベースにしたホラー推理アクション?

果たしてこれは設定を生かせているのか? 秘薬の種類が多すぎるしキャラもあんまり強くない。戦い方もうまく描写できてないんじゃないかな。映像化狙いで6人の若手女優出せばいいんだろ、みたいな感じだったり? そんなわけないか。

いろんな要素をまとめきれなかった印象。秘薬設定を頭に叩き込み、こいつの能力はコレ! と指差し確認させておいて、いや渡せんのかよ、落とすのかよ、知らん薬隠し持ってんのかよ、と怒涛の混沌に巻き込まれた。サイコ野郎はこいつ…じゃなくて影が薄い方で…のように二転三転させた割に、最終的には位置エネルギー物理攻撃で戦う無意味さだ。能力組み合わせパズルと人狼設定はどこ行ったんだ。万有引力なんてファンタジーじゃないよお…

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (今村翔吾)

羽州(出羽国=山形とか秋田とかあっちの方)とタイトルにあるが、江戸の話。江戸屋敷があるからね。

江戸の大名火消しとして採用された、引退した元エース、人呼んで火喰鳥。ボロボロの組織を再建するために奔走する。火事起きすぎでしょ江戸って。なんか最近アニメ化されてるんですね。私が読んだのは小説ですが、人気あったのかな。あったんだろうな。キャラデザイン的にはユニが統一されてないという設定は活きるのではないか。髪色、体格、衣装。そのバラエティの多彩さがいい絵になると思う。

義経じゃないほうの源平合戦 (白蔵盈太)

よーし祇園精舎の鐘を鳴らしていくぞー! 源氏西征の総大将、源範頼の物語。頼朝の弟で、義経の兄。多かった兄弟もなんやかやあって頼朝挙兵時には3兄弟に減っていた。文章はかなり現代風の書き方ですね。

義経や頼朝、家臣団それぞれ癖のある坂東武者軍団で、どういう立ち回りを見せるのか。

割と楽しめました。あとがきを読むと、この頃の話は文献も少なくて史実があってないようなもの? みたいだねえ。

鎌倉時代は将軍家に問題があって変な感じの時代だったからな。兄弟で殺し合った初代が元凶なのかな。実際頼朝は大して戦に関わらず弟に全部やらせてたもんな。兄というだけでそんなに偉いのか。最後に有望なやつを全部殺したせいで将軍家自体が尻すぼみに終わった。関東を拠点にしたこだわりは偉いが。

連続殺人鬼カエル男ふたたび (中山七里)

前作から間もないある日、奴が現れる。「また、きちゃった…❤️」

いや出てくんなよこんなすぐにさあ。ムリだろ。と思ったけど、確かに無罪だったからな。ちょっとした行き違いがあってファイタータイプの警察官とバトルしたけど、暴動のさなかではあったし、あの極悪メンバーリストの中にあれば罪は無に等しいか。そういえば前作では自衛官ともバトルしてたな主人公警察官。殴り合いやりすぎだ。それで、この自認カエル男も無事、おかえり、と。

相変わらず人体に対する尊厳がない犯行。悪趣味だ。前回の被害者遺族のその後があったのは良かった。特に最初の2人。

クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない (越尾圭)

衝撃的なヘビ殺人の開幕には度肝を抜かれた。まだらの紐が…しかし現代日本ではナントカ条約やら絶滅危惧種やらが絡んで、ラッセルクサリヘビで人を殺すと大変なことになるんだ。

アクションあり友情あり裏切りあり陰謀あり、いろいろ要素が詰め込まれていた。クライマックスはかなり大掛かりなものになった。すごい手間がかかっていて、この金額では儲けも出ないんじゃないかな。どうぶつを殺すなよ。人間もそうだが。

物語を振り返るに、序盤で動物病院に入院中のペットまで死なされたのは最後まで納得がいかなかった。ゆるせん。あとはクサリヘビの入手方法はかなり難度が高かった気がするがサラッと流されてしまった。クサリヘビも、可哀想に。道具じゃねーんだぞ。