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山椒の実

名探偵と海の悪魔 (スチュアート・タートン)

なかなか重厚で素晴らしい物語だった。しかし最近だと2段組は珍しい。

登場シーンの少ない囚われの謎解き人の周囲の人々が、船中に巣食う呪いを解いていく。いくんだけど、いろんな事柄と死が起こって、果たしてこれはどうなるの? どう収拾つけるの? と疑問に思いながらも読み進める。トム爺…じゃなくてトム翁か、コミカルな名前とは裏腹に、かなりのホラーが入ってるね。ゾンビが出てきても納得するくらいな空気だが、出てこない。

かなり良い読書体験だったのは間違いないけど、このラストはどうなんだろう。この主人公は欠点がない奴だけど、傷つきすぎているし。時代背景を考えて納得するしかないのか。

遊びの時間は終らない (鈴木光司, 天祢涼, 嶋中潤, 都井邦彦)

競作短編集。統一テーマは、終わらない時間?

最初の樹海のやつがすごかったな。回り回って。これは終わらんよ。でもまあ、そのうち終わるかなあ。いやもうちょっと続くだろうな。なんて思いながら読んでいく。楽しい時間だ。読書ってのは、こうでないと。

他のやつもそれぞれ、かなり良い出来だった。それぞれに、それぞれの臨場感がある。終わらない時間というテーマに関しては最後の銀行強盗のやつが一番テーマに合っていたかなあ。あれは終わってない。吉祥寺は元々人多いから町おこしみたいな流れにはならないと思うけどね。

ゴースト 二係捜査 (本城雅人)

このシリーズ。また穴掘り事件だ。前作前々作に引き続き。これまでは、悪人がただただ悪人であるという特徴があるが、今回はどうか。タイトルを見て、ゴーストとはもしや、、、ポケモンでは? と思ったが、結末はどうだったろうか。

今回もまあ、そうだった。こういう謎解きは時として鮮やかなものだが、犯罪とはなんなのかな。このシリーズは、毎回そんな気持ちになるよね。人生の間違いは、それと気づかぬうちに始まっている。

巨大IT企業クラウドの光と影 (ロブ・ハート)

なにこれw 紹介の文言がおかしいだろ。光と影と題しておいてフィクションの潜入ルポルタージュて。ふざけるにも限度がある。どうせ貧弱な著者の想像力に任せた先入観しかないデタラメ並べてんだろ? そう思って読み始めるのだが…

とりあえずこの描写だとドローン通販会社であって、IT企業じゃなくないか…まあAmazonとかはAWSがあるし確かにIT企業なんだけどさ。

「俺はそういうのが好きなんだ」どういうこと?

このディストピアで、3人の物語がそれぞれに進み、クライマックスへ向かう。設定はかなり壊れているが、ふわふわ感は少なくて、描写には肉感というか、リアリティを感じる。この分野も発展していっているということなんだろうな。まあ小説としては面白くできてるんじゃなかろうか。終盤の壊れっぷりも悪くなかった。クラウドバーガーうますぎワロタ。やばい。

をんごく (北沢陶)

樒なんて「樒/榁」の本を読んで以来だ。そうじゃなきゃ読めないよ「しきみ」なんて。

しかしユーモアのあるホラー、面白かったな。恐怖がありつつも、それだけではない。愛があり、愛嬌がある。当然、ホラーもある。

かなり楽しめたし、美しさのある物語だった。商家の関西弁と、時代設定の勝利だろうなあ。商売繁盛!

花歌は、うたう (小路幸也)

歌うたいの物語。ずいぶん都合がいいな。町内の人物の闇のない独白が続く。闇がなさすぎて逆に怖い。現実感が薄い。結末も早くから見えている。この空気で何かが決定的に傷つくわけがないんだよ。どうしよう、読むべきか、やめるべきか。一応最後まで読んだ。

表現は難しいな。そう思った。天才とか、才能があるだのないだの、それを文章で表現するわけだけど、まあ出来ないよねえ。どういうイメージなんだろうな。尾崎豊あたりで考えればいいのだろうか。流れ星のようにステージを駆け抜けて、いなくなってしまった歌手。

蜜蜂 (マヤ・ルンデ)

3つの物語が進んでいく。こういうのは最後に出会って一つになるのが王道なのだが、これは時代的・地理的に難しくないか? と思って読み進む。それぞれの物語は絶望的で魅力的で、否応なしに引き込まれる。

どうなるのか。同じ、ミツバチというテーマがある。ミツバチの飼育、そして絶滅による文明の崩壊。受粉を司っていたミツバチがいなくなると農業が崩壊して食糧不足で文明が…という論ね。

物語の上で、中国だけは奴隷労働による人工授粉で乗り切っている。そして奴隷労働者の子供が遭遇した事件が…

いくさの底 (古処誠二)

ちょっと珍しい時代設定の推理小説。二次大戦中のビルマの村に、日本軍だ。チジマスターだ。戦闘シーンはあまり出てこないので安心だ。殺人事件は起きるから、死人は出るのだが。

かなり面白かった。まさか、そう来るとはねえ。謎解きも良いし、謎解き以上のものも良かった。次郎長と石松。有能すぎる人物も出てくる。

真実の檻 (下村敦史)

あーこれ「同姓同名」の著者ですね。なるほどそうだったのか。昨日よりも大きな檻。

冤罪をテーマに事件の真相を追っていく。その本丸は死刑囚の、実父。この著者で、このテーマは燃えるね。必然だ。案の定、序盤からズルズル、音を立てるように惹き込まれた。

のだけど、中盤以降の展開のスピードが…ちょっと描写が薄いまま物語が進行して行くので、そこは抵抗があった。詰め込みすぎじゃないだろうか。幾重にも折り重なる真実の多面性は鮮やかだが。

注文の多い美術館 美術探偵・神永美有 (門井慶喜)

気楽に読める骨董美術品に関連する短編集。まあでもコレ、キャラ付けがちょっとウザいね。人間っぽさを感じない。美術品に関する謎解きだから、テーマは悪くないと思ったよ。

そして謎解きっつっても超能力で答えを知ることができるキャラがいるので、どうも格好がつかない。もうちょっと、どうにかならなかったんだろうか…