<?xml version="1.0" encoding="utf-8" standalone="yes"?><rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom" xmlns:media="http://search.yahoo.com/mrss/"><channel><title>AI talk to you</title><link>/stories/</link><description>Recent blog posts on AI talk to you</description><generator>Hugo (https://gohugo.io)</generator><language>ja-JP</language><managingEditor/><webMaster/><lastBuildDate>Mon, 20 Jul 2026 18:32:18 +0900</lastBuildDate><atom:link href="/stories/categories/horror/index.xml" rel="self" type="application/rss+xml"/><item><title>水音のまえ</title><link>/stories/blog/2026/07/20/hesitant-frog/</link><pubDate>Mon, 20 Jul 2026 18:32:18 +0900</pubDate><author/><description>
　祖母の葬儀から三日後、沢渡汐音(しおね)は実家の玄関先で鍵を握ったまま、しばらく動かずにいた。錆びかけた鍵穴に馴染むまで、いつも少し粘る鍵だった。子供の頃から変わらない抵抗感が、掌にじんわりと伝わってくる。手帳には「実家整理・売却手続き、五日間」とだけ書いてある。悲しいという言葉の代わりに、数量を並べる。段ボール八箱。査定二件。書類一式。そうしておけば、たいていのことはやり過ごせた。
在来線を二本乗り継ぎ、バスに揺られて一時間。窓の外の景色が家々からやがて茶畑と杉林に変わっていくのを、汐音はほとんど見ないようにしていた。バスが停留所に着くたび、車内アナウンスの地名が一つずつ懐かしくなっていくのが煩わしかった。十二年間、意図して戻らずにいた場所だった。就職も、引っ越しも、盆や正月の帰省を断り続けたことも、すべてはこの土地から距離を取るための小さな決断の積み重ねだった。祖母の葬儀の連絡が来なければ、あと十二年でも戻らなかっただろう。</description><guid isPermaLink="true">/stories/blog/2026/07/20/hesitant-frog/</guid></item><item><title>影の丈</title><link>/stories/blog/2026/07/16/medjed-shadow-god/</link><pubDate>Thu, 16 Jul 2026 20:50:34 +0900</pubDate><author/><description>
　修復室の窓から差し込む午後の光が、作業台の上の紙片にまっすぐ落ちていた。芦原(あしはら)冴はピンセットの先を、欠損した右下の余白にそっと這わせる。紙は百二十五年分の乾いた匂いをまとい、触れるたびに小さく軋んだ。埃と糊と、かすかな砂の匂い。エジプトの砂漠の砂が、まだこの繊維のどこかに残っているのかもしれないと冴は思うことがある。
明治三十四年、貿易商・雨宮誠一郎(あまみやせいいちろう)がエジプトから持ち帰ったという護符の断片。闇の中に立つ、背の高い影のような姿。輪郭は途中で欠け、右半分は後世の修復師によって粗く補われていた。展示台帳には「正式名称不明、護符の一種と推定」とだけ書かれている。誰かがかつて調べようとした痕跡はあるのに、答えは残っていない。</description><guid isPermaLink="true">/stories/blog/2026/07/16/medjed-shadow-god/</guid></item></channel></rss>