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山椒の実

Category: Science

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで (高橋 大輔)

ロビンソンクルーソーのモデルとなったセルカークの暮らした場所を探る冒険。前半のストーリーが期待を高め、後半の発掘作業が学問と歴史の奥深さを知らしめる。 いい本を読んだなー、という感想を持った。考古学は私が考えていたほどいい加減なものではなかった。ここまで探求した者だからこそ書ける、最後の描写の臨場感ね。 セルカークその人は気難しい船乗りで、乗ってたのは私掠船という公認海賊。あまり近くにいて欲しくない人

ハダカデバネズミ - 女王・兵隊・ふとん係 (吉田重人, 岡ノ谷一夫)

奇妙なネズミを研究対象に選んだ物語。魅力に溢れている? まあ女王とオスと兵隊と労働者…ハチやアリのような集団生活をする哺乳類…ネズミで、土の中に暮らす。17種類の言葉を使い分けてコミュニケーションを取り、変温動物で、このサイズの動物としては異常な長寿…まあそりゃ奇妙ですよね。著者らが興味を持つのもうなずける。 読み物としての分量も適切で、イラストも良かった。

10年後、生き残る理系の条件 (竹内健)

東芝のフラッシュの立役者で現在は中大教授の竹内さんの書籍。この界隈では有名な方ですよね。私も前職で少しはまぁ…。内容はタイトルの通り、技術者がこの先生きのこるには、という話。書籍の種類としては自己啓発本なので、普通なら私が読むような種類の本ではない。心にはあまり響かなかったけど割と面白く読めるという、珍しい本ですね。 ただやはり技術者で研究者で教育者なので、自信のないところは分かるように「ではないで

科学者は戦争で何をしたか (益川 敏英)

素粒子でノーベル物理学賞を受賞した学者で左派の闘士が語る戦争と科学者の関係。平易で読みやすい。深いことは言ってない。言ってるのは非常に単純な原理、「おまえら科学者である前に人間だろ!?」と。まあホント、大したことは言ってないな。誰もが思うことなんじゃないかという気もするし、そういうことを何にも考えてない人もいるんだろうなとも思う。 実際のところ、私も若い頃こういう類のことを考えていた。そして新卒入社

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた (ルイス・ダートネル)

文明が消滅したあとのサバイバル術、及び文明の復活のさせ方について論じた実用書。非常に興味深い。著者の知識量に圧倒される。現代はThe Knowledgeというものらしい。知識、だけじゃちゃんと訳したとは言えない言葉らしくて、うまい日本語がなくてこういう邦題になったみたいだ。 この本の魅力は、この知識量の詰め込み方。とても一冊に収まる量ではなかった気がする。こういうコスパの良い知識のタンクは一家に一冊持

青函トンネルから英仏海峡トンネルへ―地質・気質・文化の壁をこえて (持田 豊)

国鉄で青函トンネルを掘り、英仏海峡トンネルのアドバイザーも務めたトンネルの第一人者、持田さんが書いたトンネルの本。あまりに淡々と技術的な話を次々に書いていくのだが、それだけでも迫力はあるね。読ませる文章ではないが、中身が純粋に事実の積み重ねだからね。真実は伝説を超える。 前半は就職以来ずっと関わっていた青函トンネルの話。オヤジがお手製で作った潜水艦を使って調査する話とか、水平ボーリングの話とか、いろ

ミトコンドリア・ミステリー 驚くべき細胞小器官の働き (林 純一)

代表的な細胞内小器官であるミトコンドリアに魅せられた研究者が、これまでの研究成果を一般向けにまとめた本。一線の研究者が研究内容について書いた本ですが、普通に書かれているので、あまり退屈せずに読めると思います。 10年以上前(2002年)に書かれた本なのでかなり古い話だろうと思うのだが、充分に興味深い内容。ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを作り出してくれるのだが、元は現在の生物の祖先に取り込まれ