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山椒の実

Category: Books

消え失せた密画 (エーリヒ・ケストナー)

ドイツの肉屋がデンマークで戦う。少年向けのような内容だが、主人公が間の抜けた肉屋のオヤジだからなあ。登場人物それぞれキャラは立っているし話は面白かったが、チグハグさは否めないな。ラストの展開も怒涛。 小道具の密画というのも良かった。高価っぽくて取り回しが良い。偽物の準備も万端で、物語もテンポが良くて引き込まれるし、電車の中の暇つぶしに読むのには手頃だった。 と言ったように、全体的には楽しく読めた、良い

浪人回避大全 (濱井正吾)

9浪したという著者が教訓を語る。 多浪と聞いて感じるイメージと実際のものは異なるんだな。最初の著者の浪人年表を見て思う。この人は凄い。本物というか、浪人であって浪人でない、勇者とかヒーローの類の人物だ。 仮面浪人も、自分が見たことのある仮面浪人はすぐに大学来なくなったのでそういう感じかと思っていたのだが、ちゃんと単位とって卒業、就職までしてるんですね。編入試験受けて名の通った大学に移ったり。そして働い

国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (伊藤祐靖)

能登半島沖の不審船事件で煮湯を飲んだ自衛官が、その経験を元にいわゆる特殊部隊の創設に関わり、退職後も技能を磨く人生を送る。その一端に触れることができる本。国とは。そのアイデンティティは。 火力のあるデカい本隊だけでは対応できないような、戦争未満の事態が念頭にあり、そのための技能を考えるとそれは特殊部隊、という単純な話ではある。だけどその特殊部隊も人間と道具で構成されているわけで、ではどんな技能を持つ

問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術 (安斎勇樹)

ミーティングのファシリテータが使う問いかけの技術を突き詰めた学者による本。学者らしく整理されて書かれている、良書だと思います。テーマもはっきりしていて変な思想もない。実戦的な、技術。 お通夜ミーティングを避け、チームのパワーを発揮させていく問いかけの重要性とそのテクニックを示しているわけだが、なぜ問いかけが重要なのか。それはこの本を読めば分かる。どういう技術で良いミーティングでメンバーの力を活かして

三多摩原人 (久住昌之)

何を隠そう私は北多摩南ブロックの小金井市出身なので(空白期間もありますが)、まさに地元の話が語られた散歩エッセイ。 三多摩…ありますよね、そういう言い方。軽く蔑視が入っている差別語という扱いだったはずだが、書籍のタイトルにしちゃって大丈夫かこの人? 中身は、まさにあるあるの宝庫で、懐かしく思った。私よりはだいぶ上かな、世代は。 創作するものに特有の? 観察力というか、そういうものも感じられた。著者はかなり

時間とは何か (池内了)

時間についてうだうだ述べていく本。当代最強のイラストレーター、ヨシタケシンスケがイラストを担当している。さすが、味のあるイラストでそそられるね。 結局、分かったような分からないような話に終始した印象。まあ、そういう本なんでしょうね。もともと、身近ではあるが明快なテーマにはならないやつだ。

吉原花魁日記 (森光子)

父親が早死し、借金のカタに吉原に売られた女性の日記。まあ周旋人や周りの人を恨んでどうなるもんでもなくて、どう考えても母親が悪いんだけど、そこはなかなか恨めないんだろうな。最後の方は気づいているようだったが。 生々しくもひどい話だった。随分キツイな。こんな人生もあるんだな。全ての人が幸せになる世界はかくも遠いものか。この日記の冒頭が大正時代、1924年。今からちょうど100年前。100年経過して、今は

蠟人形館の殺人 (ディクスン・カー)

またホラーかー。ミステリのつもりだったのに…まあ蝋人形でホラー要素ナシはさすがに無理すよね。だって蝋人形で、なおかつ館だもんね。 しかしこの探偵、最初からいろいろ知りすぎじゃないか? こんだけ知ってて手こずるのか。 まあ推理自体は大したことがなく、凡庸な警察官が普通に捜査していればこの探偵よりも早く解決できたに違いないし、最後のカード対戦は何なんだ? 何がしたいのか。思わせぶりな悪役も、退場はあっさりとい

消された信仰 (広野真嗣)

世界遺産の長崎の隠れキリシタンに関するあれこれを扱った本。書物なしの口伝で伝わるその教えはどのようなものか。キリスト教の本流でも聖書やなんやらはありつつ、教えは変容しているわけで。書物なしで隠れて信仰を続けて歳月を重ね世代を超えると、どうなるか。 明治以降もいろんな歴史が積み重なって今の状態になっている。それを書き記した、貴重な一冊なんだろうと思う。なかなかに、深い。読んでよかった。 統合を図るカトリ

屍人荘の殺人 (今村昌弘)

うーん、設定が…そしてトリックが…割とお腹いっぱいになりがちなミステリ。かなりスリリングに読めた。 しかし、ゾンビねえ。っつーかそれはスプラッターじゃないか。ゾンビにミステリか。ソンビ自体が心の中のアイコンでもある。 次はなんだ、サメか。サメミステリか。それなら読みたい。