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環境リスク学 不安の海の羅針盤 (中西準子)

この本(amazon.co.jp)です。久しぶりにいい本を読んだ、という満足感に浸ってしまった。本を読むこと自体が久しぶり(鬼平犯科帳を除く)なんだけど、とにかく読んでよかったと思える本でした。著者本人がamazonに書いている通り、読みやすいし。

最初のほうの下水道の話を読むと、この人のデザインセンスというか、そういうのが垣間見える。下水道話の前半から引き込まれてしまったけど、特に後半が印象に残る。大きな下水道(流域下水道と言うらしいです)にして河川から水を取りっぱなしで大下水道→処理場→直接海まで通せば下水道のコストは膨れ上がり、水量は下流に行くに従って減る一方、年中渇水で生態系はなくなる。一方で小さな下水道にして、処理した後でちょこちょこ河川に戻せば下水道のコストも下がるし河川の水量は平均化できるけど、下流で取った水は汚なくなる…どうするのがいいんだ〜という話。おれ技術者にはこういうことで悩んでほしいと思ってたんだ。おれも今年はこういうことに悩んで仕事しよう。

下水道の最適規模の話については、スケールメリットより距離のメリットが強い分野があるよというのは流行ってきてるみたいですね。思えば昨年、電力関係でもいくつかそういうニュースがあったように思います(今見つかるのはこのへん(tokyo-gas.co.jp)あたり)。規模は小さくて本体の効率は多少悪くても、近くにあるということがメリットになる。

この本の本題のリスクの話も、数値を出して測定&計算しまくっている様子が窺えて楽しい。よく知られている話と本当の話のギャップは鮮やか。ものごとは見かけほどはうまくいっておらず、効率は悪い。そして世間に流れている情報には嘘がかなり混ざっているんだけど、いちいち自分で真実を追う時間と能力がない人が(私を含めて)多数派だ…改善するにはどうすればいいのだろう…。

あとは私自身の数学コンプレックス(?)との絡みで言えば、行政もまた、数学の一部であったほうがいいんだなぁということは納得しました。野球もそうだったけど。結局哲学や経済学も数学の一部ということで認定されてますから、残りは法律学と文学、歴史学、教育、スポ科くらいか…あ、スポ科も数学になったのか。今年から文系って狭くなるな(…ならないって)。

(追記) 2005-01-13 26:55 中西さん本人のページ(nifty.com)があったので書いておく。